お金に関する相談

はなだ会計FPオフィスで行われた個別相談の具体的な実例を3つご紹介します。


実例1:【個人事業主】「売上1,000万円の壁」と「法人化」の最適なタイミング

  • 相談者: Aさん(35歳・男性)
  • 職業: Webデザイナー(個人事業主)
  • 状況: 独立して5年目。順調に取引先が増え、今年の売上が初めて1,000万円を超えそう。所得税の負担が年々増えていることに加え、2年後から消費税の納税義務が発生することに不安を感じている。

ご相談内容

「このまま個人事業主を続けるべきか、法人化(法人成り)すべきか悩んでいます。法人化すると節税になると聞きますが、手続きが面倒そうで…。どのタイミングで、何を基準に判断すれば良いのか分かりません。」

会計事務所からのご提案

まず、Aさんの現在の所得や経費の内訳、将来の事業計画を詳しくヒアリングしました。その上で、以下の2つの視点からシミュレーションを行いました。

  1. 税負担の比較:
    • 個人事業主のままの場合(所得税・住民税・事業税)と、法人化した場合(法人税・役員報酬に対する所得税等)の税額を複数年で比較。
    • Aさんの場合、所得が800万円を超えたあたりから、法人化した方が税負担を抑えられる可能性が高いことを具体的な金額で提示しました。
  2. 法人化のメリット・デメリット:
    • メリット:
      • 役員報酬を設定することで給与所得控除が使え、所得を分散できる。
      • 小規模企業共済や経営セーフティ共済(倒産防止共済)など、個人事業主より有利な節税策が活用できる。
      • 社会的信用度が上がり、融資や取引の面で有利になる可能性がある。
    • デメリット:
      • 設立費用や社会保険料の負担が発生する。
      • 赤字でも法人住民税の均等割(最低約7万円)がかかる。
      • 経理処理や税務申告が複雑になる。

具体的なアクションプランとして、消費税の納税義務が発生する2年後を待たずに、来年の初めに法人を設立することをご提案しました。 それに合わせて、役員報酬の最適な金額設定、各種共済への加入手続き、社会保険の加入手続きなどをサポートするプランも提示しました。

相談後の結果

Aさんはシミュレーション結果に納得し、来期の法人化を決断。会計事務所のサポートのもとでスムーズに会社を設立し、役員報酬の最適化や共済への加入により、個人事業主時代と比較して年間約50万円の手取り収入を増やすことに成功しました。 経理の負担は増えましたが、専門家に任せることで本業のデザイン業務に集中でき、さらなる売上アップにも繋がっています。


実例2:【中小企業経営者】事業承継と高額な自社株の相続対策

  • 相談者: Bさん(68歳・男性)
  • 職業: 製造業の会社経営者
  • 状況: 創業から40年。会社の業績は安定しているが、自身の高齢化に伴い、長男(40歳)への事業承継を具体的に考え始めた。しかし、自社の株価が想定以上に高くなっており、贈与税や相続税が大きな負担になることが判明。

ご相談内容

「息子に会社を継がせたいのですが、自社株を渡すだけで莫大な税金がかかると聞き、頭を抱えています。会社の経営権をスムーズに、そしてなるべく税金の負担なく息子に移すには、どうすれば良いのでしょうか。」

会計事務所からのご提案

まず、会社の財産状況を精査し、相続税法上の自社株の評価額を算出しました。その上で、Bさんと後継者である長男のご意向を伺いながら、複数の選択肢を提示しました。

  1. 事業承継税制(特例措置)の活用:
    • 後継者が贈与または相続で取得した自社株について、贈与税・相続税の納税が100%猶予・免除される制度。
    • 適用要件が複雑なため、特例承継計画の策定から都道府県への提出、その後の報告まで一貫してサポートすることを提案しました。
  2. 生前贈与の活用:
    • 暦年贈与(年間110万円まで非課税)や相続時精算課税制度を活用し、計画的に株を移転する方法。
    • 事業承継税制と組み合わせることで、より柔軟な対策が可能になることを説明しました。
  3. 株価引き下げ対策:
    • 役員退職金をBさんに支給することで会社の純資産を減らし、株価を引き下げる。
    • 生命保険を活用し、納税資金や代償分割(他の相続人へ渡す資金)の準備をする。

最終的に、事業承継税制の活用を主軸に、Bさんへの役員退職金の支給を組み合わせた事業承継計画を策定しました。

相談後の結果

専門家と一緒に具体的な計画を立てたことで、漠然としていた不安が解消されました。現在、計画に沿って特例承継計画の認定を受け、納税猶予を受ける準備を進めています。この対策により、本来であれば数千万円にのぼる可能性があった納税負担が実質ゼロになる見通しが立ち、Bさんは安心して経営のバトンを息子さんに渡す準備に集中できるようになりました。


実例3:【個人】共働き夫婦の「老後2,000万円問題」と教育資金の準備

  • 相談者: Cさんご夫妻(夫45歳・妻43歳)
  • 職業: 共に会社員
  • 家族構成: 中学生と小学生のお子様が2人
  • 状況: 共働きで世帯収入は比較的に高いが、住宅ローンの返済や日々の生活費、子供の塾代などで支出も多く、思ったように貯蓄が増えない。iDeCoやNISAは始めているが、自己流でやっているため、このままで老後資金や教育資金が本当に足りるのか不安。

ご相談内容

「老後2,000万円問題などが話題になるたびに、自分たちは大丈夫だろうかと不安になります。子供たちの大学進学費用もこれからピークを迎えます。家計を見直し、もっと効率的に資産を準備していくための具体的なアドバイスが欲しいです。」

会計事務所からのご提案

まず、ご夫妻の現在の家計収支、資産(預貯金、有価証券、不動産等)、負債(住宅ローン等)をすべて洗い出し、現状を「見える化」しました。次に、将来のライフイベント(お子様の進学、車の買い替え、定年退職など)をヒアリングし、オリジナルのキャッシュフロー表を作成しました。

キャッシュフロー表で将来のお金の動きをシミュレーションした結果、このままの収支では、お子様2人が私立大学に進学した場合、65歳時点での金融資産が想定より少なくなる可能性が見えてきました。

そこで、以下の改善策を提案しました。

  1. 支出の見直し:
    • 加入している生命保険の内容を分析。保障が重複している部分や、割高な保険料を見直し、より適切な保険に切り替えることで月々2万円の固定費を削減。
    • 通信費やサブスクリプションサービスなど、聖域なき見直しを提案。
  2. 資産運用の最適化:
    • 現在運用しているNISAとiDeCoのポートフォリオ(資産配分)を診断。リスク許容度に合わせ、全世界株式インデックスファンドをコアにするなど、より長期的なリターンが期待できる配分への見直しをアドバイス。
    • NISAの非課税枠を最大限活用するための積立増額プランを提示。
  3. 所得控除の活用:
    • ふるさと納税や医療費控除など、まだ活用できていなかった税金の優遇制度の活用を具体的にレクチャー。

相談後の結果

将来のお金の流れがグラフで明確になったことで、漠然とした不安が「いつまでに、いくら必要か」という具体的な目標に変わりました。保険の見直しとNISAの積立額増額を実行したことで、年間50万円以上を将来のための資産形成に回せるようになりました。 Cさんご夫妻は、「専門家に相談したことで、家計の健康診断ができた。これからは自信を持って資産形成に取り組める」と大変満足されています。