【要注意】ご家族に認知症の方がいる皆様へ。相続で起こる3つの深刻なトラブル
「うちは家族の仲が良いから、相続でもめることなんてない」 そう思っていても、法律上の問題で手続きがストップしてしまうケースがあります。
特に、相続人の中に認知症の方がいらっしゃる場合、予想外のトラブルに発展することが少なくありません。手遅れになる前に、起こりうるリスクを正しく理解し、対策を検討しましょう。
リスク1:遺産の分け方が決められない【遺産分割協議の凍結】
遺産を相続する際、最初に行うのが「誰が・何を・どれだけ受け取るか」を決めるための、相続人全員による話し合い(=遺産分割協議)です。
しかし、相続人の中に認知症などによってご自身の意思をはっきりと示すことが難しい方(法律上「意思無能力者」と判断される方)がいる場合、その方が参加した遺産分割協議は**「無効」**となってしまいます。
「本人のためだから」と、他のご家族が代わりに署名や捺印をしても、法的には一切認められません。それどころか、私文書偽造という罪に問われる可能性もあり、非常に危険です。
この最初のステップでつまずくことで、すべての相続手続きが完全にストップしてしまうのです。
リスク2:故人の預貯金が引き出せない【金融資産の完全凍結】
金融機関は、口座名義人の死亡を確認した時点で、相続トラブルを防ぐために直ちにその口座を凍結します。
この凍結を解除し、預貯金の解約や名義変更を行うためには、原則として、相続人全員の合意を示す「遺産分割協議書」と全員の印鑑証明書などが必要になります。
しかし、リスク1でご説明した通り、遺産分割協議を有効に成立させることができないため、いつまで経っても口座の凍結は解除されません。
その結果、
- 葬儀費用や入院費用の支払いができない
- 残された配偶者の当面の生活費が引き出せない
- 公共料金などの支払いが滞ってしまう
など、現実的な資金繰りの問題に直面するケースが後を絶ちません。
リスク3:税金の特例が使えず、納税額が大幅に増加
相続税には、納税者の負担を大きく軽減できる、非常に効果的な特例制度があります。 特にインパクトが大きいのが、以下の2つです。
- 配偶者の税額軽減 配偶者が取得した遺産が「1億6千万円」または「法定相続分」のどちらか多い金額までであれば、相続税が一切かからないという非常に有利な制度です。
- 小規模宅地等の特例 亡くなった方が住んでいたご自宅の土地などを相続した場合、その土地の評価額を**最大80%**も減額できる制度です。
これらの強力な特例を適用するには、相続税の申告期限内(通常、亡くなってから10ヶ月以内)に遺産分割協議が完了していることが原則となります。
遺産分割協議がまとまらなければ、これらの特例は適用できません。 その結果、本来であれば支払う必要のなかった何百万円、場合によっては何千万円という高額な相続税を納めなければならないという、深刻な事態に陥る可能性があるのです。
手遅れになる前に、専門家へご相談ください
これらのリスクは、決して他人事ではありません。 しかし、事前に対策を講じることで、回避できる可能性は十分にあります。
ご家族がまだお元気なうちに「遺言書」を作成したり、「家族信託」「任意後見」といった制度を活用したりすることが有効な対策となります。
また、すでに相続が発生し、お困りの場合でも「成年後見制度」の申し立てなど、法的な手続きによって解決への道筋をつけることが可能です。
「うちの場合はどうなんだろう?」「何から始めればいいか分からない」と少しでもご不安に思われたら、相続問題に詳しい専門家へお早めにご相談ください。お客様の状況を丁寧にお伺いし、最適な解決策をご提案いたします。